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二重国籍と帰化申請

1.帰化申請と二重国籍の問題

帰化申請を考えているお客様からは、帰化すると従前の国籍はどうなるの?という質問を受けることもよくあります。

帰化したら前の国籍は無くなってしまうのでしょうか?それとも前の国籍も日本の国籍も両方持ったままでも大丈夫なのでしょうか?

これが日本での帰化と二重国籍の問題です。

そこで、今回は、日本と二重国籍について考えていきます。

2.帰化申請の国籍喪失要件とは

日本の場合、帰化申請をするための要件には国籍喪失要件があります。

国籍喪失要件とは日本に帰化することによって、元の国籍を失うことができる、若しくは国籍離脱できることが必要である、という帰化の条件です。

ここで日本では基本的には二重国籍を認めてはいないので、日本に帰化することによって元のの国籍を失う、もしくは国籍離脱することが必要になります。


つまり、法律上は、日本に帰化をすることで、従前の国籍は失うことが必要になります。

日本に帰化をして、日本国籍を取得したが、元の国籍も失いたくないという場合は帰化申請をすることができません。

根拠は国籍法第四条、五条です。

第四条

1、日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。
2、帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。

第五条

法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。

(※一~四省略)


五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。



つまり、日本に帰化するためには、母国の国籍を喪失しなければならないという根拠は、国籍法第五条五項に記載されています。


これが、帰化申請の要件の一つである国籍喪失要件です。

3.重国籍になる場合はどんな場合なのか?

では、二重国籍になる場合とは、どんな場合なのでしょうか。

二重国籍となるというと、自分で海外に行って長く暮らして永住権を取得し、さらにもうこっちで暮らしていくからその国の国籍を取得する、というイメージがありますが、実際はそうではありません。

例えば、アメリカではアメリカで出生した子供は親の国籍が何であれ、アメリカ国籍を取得します。そうすると、日本人の両親で、子供がアメリカで生まれたりするとアメリカで出生した子供は親の国籍が何であれアメリカの国籍を取得するので二重国籍となります。

また例えば父親が日本人で母親が韓国人である場合で日本で出生した場合は、子供は出生により日本と韓国の二重国籍となる場合があります。

上記のような理由で20歳になるまでに日本と外国の国籍2つの重国籍になった場合は、22歳になるまでに「国籍の選択」をしなければなりません。

4.国籍の選択の手続き・方法

では、重国籍者が国籍法に基づいて、日本又は外国のどちらかの国籍を選択しなければならない場合、「国籍の選択」はどのような手続きで行われるのでしょうか。

具体的な方法は、以下の通りとなります。

①外国の国籍を離脱する方法


当該外国の法令により,その国の国籍を離脱した場合は,その離脱を証明する書面を添付して市区町村役場または大使館・領事館に 外国国籍喪失届を提出する方法。離脱の手続については,国により違うので、当該外国の政府またはその国の大使館・領事館に相談する。


②日本の国籍の選択の宣言をする方法


市区町村役場または大使館・領事館に「日本の国籍を選択し,外国の国籍を放棄する」旨の国籍選択届をする。

国籍選択の手続きの相談は、最寄りの法務局・地方法務局,在外公館,市区町村役場で行うことが可能。

5.二重国籍を認めている国は?

では、日本とは異なり、二重国籍を認めている国はないのでしょうか。

日本や中国では二重国籍は認められていませんが、世界では約80ヶ国の国々が重国籍を認めています。

ただし、二重国籍を認めている国の中には、基本的には重国籍を認めていないが、例外的に認めているという国も含まれております。

例えば、ブラジルなどは例外的に二重国籍を認めている国になっています。

※二重国籍を認めている国の例

アメリカ合衆国、ロシア、カナダ、メキシコ、コロンビア、ブラジル、ペルー、パラグアイ、ウルグアイ、イギリス、アイルランド、フランス、イタリア、スイス、ポルトガル、フィンランド、スロバキア、オランダ、スペイン、デンマーク、チェコ、ギリシャ、イスラエル、トルコ、ナイジェリア、モロッコ、南アフリカ共和国、コートジボワール、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、フィリピン

6.帰化申請と戸籍

帰化申請の手続き的には、中国、韓国、アメリカ等、外国籍をもつ方が帰化申請を行い、許可されれば日本の国籍を取得することになります。

そして、日本国籍を取得することで外国籍の時には作成されなかった戸籍が作成され、戸籍謄本の取得も可能となります。

あまり知らない方も多いのですが、外国人には戸籍は作成されませんので、戸籍が作成されたことによって日本人であることの証明にもなります。

外国人が日本人と結婚したらその外国人の氏名等が相手の日本人の戸籍に記載されるだけで、外国人自身の戸籍ができるわけではないので、勘違いしないようにしてください。

7.帰化申請における二重国籍の問題点

日本では基本的には二重国籍は認められていませんので、帰化することで元の国籍を失うことが必要になります。

しかしながら、実務上、法律的に必要な国籍離脱の手続きを取らず、帰化により日本国籍を取得しながら他国の国籍も保有したままになっている例も少なくありません。

また、外国人の在留資格の一つである永住権と帰化の違いの一つに、国籍を喪失するかしないか、という違いがあげられます。

ですから、どうしても国籍国の国籍を残したまま日本で長期安定的に暮らしたい場合は、帰化よりも永住許可の取得を勧めることもあります。

実際、二重国籍であることを隠していると、思わぬリスクに直面することもあります。外国籍を持っていることを隠して国籍条件のある一定の職業につくと処罰されたり、旅行で入国したとたん、兵役の義務逃れが発覚して逮捕される等の事例もあります。

ですから、国籍というのは個人のアイデンティティに関わる問題でもあり、こっちが便利だから、という理由で安易に変更すべきではなく、いろいろなリスクも考え、熟慮の上決定することが重要です。

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